2022.02 カワセミ千本ノック
いつもお世話になっている先輩カメラマンが カワセミが“飛び込みまくる”スポットを教えてくれた。 ㅤ その話を聴いてから ずーっと行きたかったのだが ㅤ 正月から左肘の前斜走靭帯を損傷し 超望遠レンズの手持ち撮影が難しく、断念していた。 ㅤ 息子も撮影に行きたい気持ちを こらえて待ってくれ ㅤ 靭帯が回復傾向となったので ㅤ ようやく、2月最初の土日 念願の飛び込みスポットへ挑んだ。 ㅤ しかし、 マイナス2℃となった早朝の小川は 水が固く凍っていた。 ㅤ これではカワセミは飛び込めないので 先輩は倒木を使って氷を砕いてくれ ㅤ カワセミの飛び込み方や撮影の仕方も、 優しく教えてくれた。 ㅤ ㅤ まだ陽が当たらない 河原の冷たい岩に腹ばいになり カワセミの飛び込み撮影を開始。 ㅤ これが、面白くて、寒くて、泣きそうになる。 ㅤ カワセミは飛び込みの高度を上げて 勢いよく飛び込んだ。 ㅤ 冬の厳しい寒さでは、 魚は深いところにいるのだろう。 ㅤ 水しぶきと共に ㅤ 「ドボン!」 ㅤ 「バチン!」 ㅤ 静かな朝に、強く響く音。 ㅤ 飛び込みの勢いに似合わず、 くわえて戻るのは小さな魚ばかりだった。 ㅤ だから、何度も、何度も、飛び込む。 ㅤ 本当に、何度も、何度も、何度も。 ㅤ 朝早くから、夕方まで、続いた。 ㅤ 私も止まらず、追いかけ続けた。 ㅤ 結果、2日間で2万枚を超える撮影枚数となった。 ㅤ ㅤ この膨大な枚数になったのは カワセミの飛び込み回数だけが原因ではない。 ㅤ 「600mmの超望遠レンズで綺麗に写したい!」 ㅤ そんな私のこだわりがあったからだろう。 ㅤ ㅤ 撮影について、 みんなからアドバイスも頂いていたのだ。 ㅤ 短めのレンズで遠くから撮って、後で切り取る。 短めのレンズなら、 カメラを上下左右にふらなくても カメラのAFで飛び込み写真が撮れる! ㅤ これなら簡単だよー、と。 ㅤ 私の眼のことを理解してくれているからこそ 確実に撮れる方法を教えてくれたのだとわかる。 ㅤ だが私は極力 撮影時にベストな写心に近づけたい。 補正前提ではなく できるだけ切り取らない選択をしたかった。 ㅤ 眼が見えていたころよりも 自分の器、つまり可能性を広げ続けるためだ。 ㅤ 前に進むと決めた自分の選択が 普通なら無理だと言われる選択だっただけだ。 ㅤ 頭ではわかっている。 私の眼ではできるわけがない。 ㅤ それでも心が思ったんだ。 ㅤ 「綺麗に写したい!」 ㅤ それこそが原動力だ。 ㅤ ㅤ 頭でわかっていた「できない」という現実は 最初からつきつけられた。 ㅤ 最初の飛び込み50回は、カワセミすら写っていない。 それでもひたすら連写した。 ㅤ くじけそうになりながら、たくさん工夫した。 ㅤ 見えなかろうが カワセミが少しでも動いたら カメラを上下左右に動かさなければならない。 ㅤ カワセミを追い続けなければならないレンズを 大事に抱えつづけた。 ㅤ 想像通りの困難はあったが カワセミは何度も何度も飛び込んでくれるので 飛行経路がわかってくる。 ㅤ そのほか得られる情報は全て取り入れる。 ㅤ ・「ドボン!」の音の場所 ・止り木の位置関係 ・周りのカメラマンのカメラの角度・振り方 ㅤ そして、 ・私に残された視力 ㅤ “ファインダー越しにカワセミらしき 黒くぼんやりした影が動いているようだ…” ㅤ といった情報も大変貴重だ。 ㅤ 撮影場所も固執せず、 移動が怖いとためらわず、 撮りやすそうな場所を積極的に探して頑張った! ㅤ 2日間、400回にも及んだ カワセミの飛び込みにひたすら食らいついた! ㅤ ㅤ さて、撮れ高はというと ㅤ 撮影した2万枚のうち フォーカスが当たっていたのは、300枚。 ㅤ 数字だけを見ると、失敗ばかりと感じるかもしれないが、 ㅤ R3とロクヨン*がものすごく頑張ってくれたので 自分が想像したよりずっとたくさん撮れた! (*ロクヨン:600mm f/4レンズの略称) ㅤ とってもとっても嬉しい、300枚。 ㅤㅤ 「カワセミ飛び込み千本ノック」と題し シーン毎にしばらく定期投稿していきます。 ㅤ カワセミ必死の“生命の光”が詰まった写心。 ぜひ一緒に愉しみましょう!!